イヴ・サンローラン×ピエト・モンドリアン


こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

先日公開された映画「イヴ・サンローラン」。
モード界の帝王として彼が味わった栄光と苦悩。
その波乱万丈な半生を綴った映画を鑑賞してまいりました。

イヴ・サンローラン役を務めた主演のピエール・ニネは弱冠25歳の若手フランス人俳優。
数か月をかけ役作りに努めただけありデッサンの描き方や普段の仕草だけでなく、少しはにかみながらショー後のランウェイを歩く様子までまるで本人を彷彿させる高い演技力でした。

言わずと知れたファッションデザイナーのイヴ・サンローラン(1936-2008)は、クリスチャン・ディオールの助手としてキャリアをスタート。
ディオールが急逝したことにより、わずか21歳という若さでディオールの主任デザイナーを一任されることになったのです。

当時からファッションとアートは切っても切り離せない関係だったのでしょう。
劇中には、サンローランと交流のあった芸術家として、ジャン・コクトーやベルナール・ビュッフェ、アンディー・ウォーホルなども登場していました。

その後、独立し自身のブランドを立ち上げたサンローラン。
彼が1965年に発表したミニドレス「モンドリアン・ルック」は一大ブームを巻き起こします。

モンドリアン・ルックが表紙になった当時の雑誌

この斬新なスタイルは、二つの点で時代をよく読んでいました。
一つ目は、それまでの伝統であったオートクチュール(特注の高級仕立て服)からプレタポルテ(既成服)へ変換した点。
1960年代は第二次世界大戦後に生まれた若者が成人し、主要な購買層となった時期。
この若いエネルギーに着目し、サンローランはすぐに着られる実用的な服を大衆向けにデザインするようにシフトします。

二つ目の点は、現代アートをファッションに取り入れた点。
当時流行していたオランダの抽象画家ピエト・モンドリアン(1872-1944)の作品を元に制作した”モンドリアン・ルック”は若者に絶大な支持を得、新しいエレガンススタイルとして受け入れられました。
その後もサンローランは、その後も次々と刺激的なファッション×アートの世界を発表していきます。

ちなみにモンドリアンは対象の形態を「垂直線」と「水平線」、さらに色彩を「三原色(赤・青・黄)」と「非彩色(黒・白・灰)」に還元し、全ての対象物はこれらの組み合わせで成り立つという美学に到達した抽象絵画の先駆的な画家。

建築やデザイン界にも大きなインパクトを与えたモンドリアンの作品は今でも影響力が強く、日本で開催される美術展には毎年のように出品されています。
例えば最近では、昨年末に国立新美術館で行われたクレラー=ミュラー美術館展、さらには昨日より開幕したチューリヒ美術館展でも見られるとか。

 

また、当店では弊社が制作したモンドリアンの複製版画を展示販売中。
目に飛び込む明るい色彩と明確な線使いで人気の「赤・青・黄のコンポジション」(左)
優しい色合いでお部屋のインテリアともよくなじむ「ピンク・青・黄・白のコンポジション」(右)
どちらも大変人気の作品です。

それにしても、ファッションとアートの関係。
それはいつの時代もその時々の流行や社会現象などを吸収しながら、相互に刺激を受けあい時には融合しながら形になっていくものなのだ、と改めて感じる映画鑑賞でした。
ファッションもアートも「生きている」んですね!

(R・K)