ドーム兄弟「風景文花瓶」のご紹介

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

気持ちのいい爽やかな初夏の陽気が続くこの頃。
そんな本日は、エミール・ガレと並ぶガラス工芸家の大家ドーム兄弟の作品から、新緑の季節を表現したような美しい花瓶をご紹介しましょう。

制作年:1900年代初頭
技法:ヴィトリフィカシオン、被せガラス、酸化腐蝕彫り
高さ:25cm
側部に陽刻サイン

 

兄オーギュスト(1853-1909)と弟アントワーヌ(1864-1930)からなるドーム兄弟が生まれたのは、フランスのロレーヌ地方にあるビュッシュ。
隣国プロイセンとの国境に位置するロレーヌ地方東部の村です。

まだ二人が幼かった1872年。
プロイセンの侵入を恐れた一家は普仏戦争終了後、内陸の村ナンシーに移住。
そこは、古くからガラスや陶器の生産で有名な自然豊かな村でエミール・ガレも生まれ育った場所です。

その後オーギュストはパリで法律を学び、アントワーヌは技師資格を取得。
やがて父親ジョンの経営するガラス工場を引き継ぐ形で自然とガラス製造事業の道へと進みました。

フランスロレーヌ地方・ナンシー

ガラス食器などの日用品を主に生産していた二人ですが、ある日、転機が訪れます。
それは、1889年のパリ万国博覧会で見たエミール・ガレ作品の高い芸術性。
以降、ガラス工芸家や美術家、デザイナーなど優秀な職人を多く採用し分業体制を取り、効率的な経営を実現。
芸術的水準の高いガラス製品を次々市場に送り出す一大企業へと発展していきました。

めきめきと頭角を現したドーム兄弟。
1894年から各地の展覧会で次々と金賞を受賞し、ついに1900年。
最も名誉あるパリ万国博覧会において大賞を受賞し、名実ともにアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家となります。

では、同じナンシーを拠点に活動し妍を競う関係にあったガレとドーム兄弟の違いはなんでしょう?
もちろん一言では語れませんが、ガレが対象をクローズアップしたような大胆な構図で幻想的な作品を好んだのに対し、ドーム兄弟には風景や植物をやや遠景で写実的に表現している作品が多いと言えるかもしれません。

今回ご紹介するドーム兄弟の風景文花瓶はシンプルな円柱型のフォルムを最大限に利用し、夕焼けに染まるような木々が風にさざめく様子をさながら一枚の風景画のように繊細に表現。
ドームの真骨頂である写実性がいかんなく発揮されています。

ヴィトリフィカシオン

また、新しいガラス技法を意欲的・創造的に考案し続けたドーム兄弟の類稀なる技法の中でも最も有名なのが<ヴィトリフィカシオン>。
これは、溶解した高温のガラスの上に色ガラスの細かい粉を撒き、接着させることで表面にマーブル状の薄い混色層を作る技法。
この技法の開発により、より複雑で重厚な色調に仕上げることに成功しました。

1920年代に入るとアール・ヌーヴォーからアール・デコスタイルの作品を発表するなど、時代の流行に即した柔軟な姿勢で、現在まで生き残るブランドへと大きく発展しました。
(現在はドームクリスタル社)

当店では、エナメル色彩による絵付けを施した可愛らしい小瓶や鉢など様々なドーム兄弟作品を販売。
ガレ始め他のガラス効果の作品も一堂に展示しておりますので、是非ドーム作品と併せてご覧くださいませ。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。

<ドーム兄弟取扱作品一部>
※その他のガラス工芸品はこちらでもご紹介しております。

「フリージア文花瓶」 1910年頃 ラメル、ヴィトリフィカシオン、 酸化腐蝕彫り
「ロレーヌ十字文蓋付パンチボウル」 1890年代初頭 酸化腐食彫り、金彩
「葡萄文鉢」 1900年代初頭 ヴィトリフィカシオン、酸化腐蝕彫り


(R・K)