美術文芸雑誌『ヴェルヴ』のご紹介

こんにちは。
ブログをお読みいただきありがとうございます。

さて昨日から始まった大型連休。皆様どこかへお出かけされますか?
当店は、連休中も営業しております!
先月駅ビルがオープンした吉祥寺はどこもたくさんの人で混みそうですが、商店街から一本路地を入った当店は、土日でも比較的ゆったりご鑑賞いただけますよ。


『ヴェルヴ』35-36号  アンリ・マティス特集号
制作年:1958年
制作工房:ムルロ工房(リトグラフ)&
ドラジェ工房(本文および複製デッサン)
技法:リトグラフ、エリオグラヴュール
制作部数:6500部


さて今回ご紹介する作品は、世界で最も美しい美術雑誌とも謳われる美術文芸雑誌『ヴェルヴ』。

この『ヴェルヴ』は、ある美術編集者が発起人となって1937年から1960年の24年間に全38号が出版されました。
その発起人こそ、20世紀美術界で多くの功績を残した著名な編集者テリアード(本名:ストラティス・エレフテリアーデス)。

1897年にレスボス島で生まれたテリアードは法律家を目指し、18歳の時にパリへ渡ります。
しかし、彼がパリで魅了されたのは法律ではなく、美術や芸術。
やがて、文芸評論家や美術編集者、また画商として活躍するようになります。

当時20世紀初頭のパリ。
そこは、神秘的な要素の強い象徴主義などの19世紀末芸術に代わる、新しい時代の夜明け。
色彩を爆発させたフォービズム(野獣派)や形態の新しい解釈を追究したキュビスム(立体派)など、より大胆で自由な表現の20世紀芸術が次々と花開いた黎明期でした。

テリアードは、その鑑識眼の高さを武器に、その頃若手芸術家として注目されていたシャガールやマティス、ピカソなどの作品を解説する書物の発行を計画。
それが、フランス語で”熱気”を意味する美術文芸雑誌『ヴェルヴ』の出版でした。
自らこの本格的な美術書を編集出版したテリアードがヴェルヴにおいて残した功績の一つ。
それは、作品を高品質のリトグラフ版画で制作し、毎号収録したことです。

『ヴェルヴ』収録作品の一つ マティス「インコとセイレーン」

それだけではありません。
ヴェルヴでの特集が決まった画家はヴェルヴの表紙や表題口絵、タイトルなどをデザインし、その他にもヴェルヴのためにオリジナルで制作されたリトグラフが多数収録。
こうして、ヴェルヴは豪華な美術雑誌としてその資料価値を高めていったのです。

また、テリアードは時代のニーズも的確に読んでいました。
20世紀初頭は、産業革命などの社会的変化に伴い、力や富を得て「美術作品を所有したい」と考える市民が増えるようになっていた時代。

そこで、テリアードは版画による作品集を出版することで、より多くの人々に美術作品を紹介することに貢献。
また同時に、美術品を手に入れたいという一般富裕層のニーズにも応えていったのです。
彼は、当時の人気画家以外にも中世ヨーロッパの彩色写本に傾倒しており、14世紀にランブール兄弟が制作したベリー公のいとも豪華なる時禱書(詳しくはこちら)などの美しい装飾写本を忠実にヴェルヴで再現しています。

特に親交の深かったマティスとは何度も特集号を組み、また切り紙絵の奇抜な色彩と大胆なデザインが特徴の版画集、『ジャズ』の刊行(1947年)にも携わりました。

当店では、5/1-31まで企画展「マティス展」を開催中。
『ジャズ』や『ヴェルヴ』に収録されたリトグラフ版画を始め約40点を一堂に展示販売いたします。
この機会をぜひお見逃しなく!

ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。
また、他マティス作品をご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

(R・K)